米澤穂信『さよなら妖精』
タイトルから漠然と、超自然的なフェアリーストーリーとミステリーが融合するシュールな作品を想像していたが、ウェルメイドな青春群像ミステリーだった。
地方都市に住む高校三年生四人はユーゴスラビアからやってきた同年代の少女マーヤと知り合う。何にでも好奇心いっぱいのマーヤにひきこまれて、彼らはいくつかの謎解きをすることになる。取り扱う謎は、北村薫のように、日常の中で見かけたささいなものばかり。たとえば、本降りの雨の中、男は傘を持っているのに、なぜささずに走っていったのかとか、死にそうだから神社に餅をもっていこうと話していた男たちの目的、などなど。カフェでの会話に耳を傾けて、断片から想像をふくらますのが好きなぼくにとっては、こういう謎は大歓迎だ。
ほろ苦いラストは悪くないと思うが、どうせならもっと謎解きの要素をきかせてもよかったろうと思う。あるいは逆に謎は謎のままにしておいてもよかったかもしれない。注意事項として、上に書いたとおり、この作品は日常の謎を扱ったミステリーだけど、人は死ぬ。