人の言葉(といっても英語だけだが)がわかる犬ミスター・ボーンズが、飼い主ウィリーと死別する前後の遍歴をたどるロードムービー的なストーリー。ポール・オースターらしく夢と現実が交錯しながら物語が語られる。ぼくは犬より猫派だが、猫と旅をするのは難しい。旅をするならやはり犬だ。
ラストは、ありきたりなハッピーエンドでもなく、わざとらしい予定調和で組み上げられた悲劇でもない。そういう生暖かさを拝した、金属のように冷たい肌触りの偶然が物語を閉じる。本から目をあげると同じ冷ややかさに自分が包まれていることに気がつく。