吉田修一『日曜日たち』

日曜日たち

5人の登場人物たちのそれぞれの日曜日を描いた連作短編集。5人の登場人物に直接の関連はないが、共通して語られるエピソードがあり、最後の物語につながってゆく。

相変わらず映画的な場面展開。過去と現在のエピソードを、流れをたくみに切りながら、交互に語ってゆく。今回は突き放したような人間描写は影をひそめ、暖かいトーンが感じられる。その分、人物の描き方が類型的で、物語としても深みがない作品があったが、でも最後の『日曜日たち』のラストシーンはとてもよくて、ちょっとほろりとさせられた。