エドワード・ケリー(古屋美登里訳)『アルヴァとイルヴァ』

アルヴァとイルヴァ

前作『望楼館追想』がとても気に入ったので数年ぶりの新作である本書を手に取ってみた。

エントラーラという架空の街のガイドブックという体裁をとりながら、街の名士である双子の姉妹アルヴァとイルヴァの人生を追いかけてゆく。いつかエントラーラを飛び出すことを夢見るアルヴァと家から一歩も出ることができないイルヴァ。正反対の二人だが、ふつうの双子以上の絆で結ばれている。二人はプラスティック粘土を使ってエントラーラのミニチュアを作り上げることに情熱を傾ける。やがて、大地震が街を襲い、粘土のミニチュアは傷ついた人々の心を癒すものとして脚光をあびる。だがそれは一時だけのことだった…。

ガイドブックの部分で没個性的に登場した人物が、双子の物語の部分では大きな役割を果たしたりする立体的な構成がいい。だが、物語全体がもう少し長い方がより効果的だったような気がする。

この物語のもうひとつの主役は地震で、すべてを揺さぶって破壊するそのパワーはほかの誰よりも印象的だ。

★★★