北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

偏狭なナショナリズムをふりかざしてものいう人々はどうしようもないと思うが、それを批判する論調もどこかずれていて、問題の核心に届いてないと思ってきた。タイトルからするとこの本もまたそうした批判本のひとつかと思わせるが、そうではなく、「アイロニー」の歴史的変遷をたどり、なぜアイロニーというすべてを相対化してしてしまわずにはいられない視線から、「ナショナリズム」や「反市民主義」のようなロマン的なものがうまれてきたかを解き明かしている。

アイロニーは今やぼくの生き方を規定しているといっていい。アイロニーの含まれていない笑いを笑うことはできないし、アイロニーから得られる軽い優越感で日々をやりすごしている。でもそれは特権的なものではなく、テレビを通じて大量にばらまかれたものだったのだ。この本はそういうことも教えてくれた。しかし、これもまたアイロニーの効果であり、結局ぼくたちはアイロニカルに生き続けるしかないのだ。

★★★★