テッド・チャン(浅倉久志訳)『あなたの人生の物語』

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

SF短編集。

単に発想が奇抜なだけではなく、哲学的に深いテーマを盛り込んでいる。『理解』では脳の働きをエンハンスさせられた男が自分の脳の働きそのものを認識して調整できるようになっているし(つまり彼は「語りえないもの」を語ることができる)、表題作の『あなたの人生の物語』では、エイリアンとの接触から共時的な認識の仕方を学び未来が手に取るようにわかるようになる。『地獄とは神の不在なり』で最後に主人公が感じる「神への愛」も壮絶だ。

反面、彼の作品には独特の冷たさがあっていまひとつ愛着をもてないということもいえて、尊敬と愛はちがうのよなんてうそぶいてしまう。でも、次作が出たら買ってしまうだろう。

★★