大塚英志『物語消滅論―キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」』
最近やたら大塚英志の本が出ているなと思ったら、これは『バカの壁』と同じように書き下ろしならぬ「語り下ろし」という形で作られた本とのこと。同じ言葉がやたら繰り返されるのもそういうわけだったか、とはげしく納得。「語り下ろし」だと簡単に読み進められるのだけど、ページ数に比して内容が薄い気がしてしまう。『バカの壁』もそうだったけど、論旨が若干ふらついてしまうせいか、読み終えた後、何が書いてあったかぼんやりとしか思い出せないのだった。
今まで「文学」を批判してきた筆者が、ここでは援護にまわっている。イデオロギーに代わってわかりやすい物語が社会を動かす時代になっているという危惧があって、それに対抗するには当座は「文学」しかないんじゃないかという結論。
挙げられているひとつひとつの例に対してはいくつか頷けないところもあるのだけれど、いつもながらこの人の直感力はすごいと思う。
★★