アンヌ・レエ(村松潔訳)『エリック・サティ』

エリック・サティ (白水Uブックス)

有名なジムノペディをはじめとしてサティの音楽の大ファンだが、ぼくより100年前にフランスで生まれたということをのぞいて、彼自身についてはほとんど何も知らなかった。音楽の印象から孤高な隠者のような生活を送っていたような印象があったが、それは半分あたり。白い山羊髭、山高帽、コウモリ傘がトレードマークで、気取り屋で気難しい人間。生涯独身で、孤独と貧窮にさいなまれつつ(おそらく酒のせいで)59歳でその生涯を閉じたらしい。しかし、その反面、彼の周りには、ドビュッシー、コクトー、ピカソなど著名な人々がいたし、彼を師と慕う人々もいた。その中で、彼なりに野心をもっていたし、実際それなりの評判をかちとったこともあったのだ。

本書はサティの人生というよりその音楽に焦点をあてて、さまざまに変化したスタイルの秘密を追っている。音楽の専門的な話が多くてちんぷんかんぷんなので、せめて音楽を聴きながら読もうとCDを買い込んでみたが、焼け石に水だったかもしれない。

ともあれ、サティの音楽はすばらしい。死後80年近くたって、自分の音楽がこんな極東の僻地で聞かれていることを知ったら、皮肉屋の彼は何というだろう?