地点『悪霊』

つい最近『悪霊』を読んだタイミングで今回の上演。グッドタイミングというしかない。 長大な小説だし、地点なので、ストレートな演劇化ではない。舞台には雪が降っていて、池に見立てられたとおぼしき中央の沈み込んだ穴のまわりを安部聡子さんがハイペースでジョギングしているシーンからはじまってまず舞台の美しさと奇抜さに度肝をぬかれる。彼女には物語の語り手G(小説では男性でほとんど描写らしい描写はされていない)の役柄が割り当てられていて、そのほかの俳優にも小説の登場人物が割り当てられているが、その役柄を演じるというのでなく、なんというかむしろリーディングに近い。その人の言葉を独特な抑揚や発音で読むのだ(Gに顕著だがたまに他の人の言葉を読んだりもする)。登場人物たちはほぼジョギングをしているか互いに柔道の組み手のようなことをしている。 ...

ドストエフスキー(亀山郁夫訳)『悪霊』

鬼気迫るとしかいいようがない。ぼく自身悪霊にとりつかれたみたいに夢中になって一気に読んでしまった。『カラマーゾフの兄弟』よりこっちの方がパワフルで普遍的だ。 ...