レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『水底の女』

春樹マーロウもこれにて完結。奇しくもぼくが最初に読んだチャンドラー作品だ。あとがきで訳者曰く、基礎構造に無理のあるチャンドラーらしくない作品ということだが、ぼくは、プロットが発散しない分集中できで、この作品がすごく好きだということを再確認した。『ロング・グッドバイ』の次に好きかもしれない。 ...

レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『プレイバック』

『みみずくは黄昏に飛びたつ』を読んで半年くらい前に発売されていたことに気がついた。 チャンドラーが完成させた最後のマーローものの長編小説。以前、清水俊二訳で読んだときはなんだかピンとこなかった。世評も概ねそんな感じで、巻末の訳者村上春樹による解説(これを読むのが本編を読むことにに匹敵する目的だったりする)によると「一級の作家の書いた二級の作品」といわれているそうだ。ただ日本では「タフでなければ生きていられない。優しくなければ生きている資格がない」という生島治郎訳の名台詞が一人歩きして有名になっている。海外ではそんなことはまったくないらしい。ただこの訳は原文の If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive,. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive. の細かいニュアンスを伝えきれてないようだ。村上春樹がどう訳したかは是非ページを開いてみてほしい。 ...

レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『高い窓』

村上春樹訳のチャンドラーも5冊目。マーロウは裕福な未亡人マードック夫人の依頼で持ち去られた貴重なコインのゆくえをさがす。マーロウはマードック夫人の秘書的な役割をしているマールという若い女性の危うげな不安定さに目をとめる。人が立て続けに2人死に、マーロウの元に失くなったコインが送られてくるが、マードック夫人に電話するともうみつかったという。さらにおきる殺人に、過去のもうひとつ別の殺人の影が覆い被さる……。 ...

レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『大いなる眠り』

村上春樹が訳すチャンドラーもとうとう四冊目、これで長編の過半数が彼によって訳されたことになる。ずいぶん昔に創元推理文庫版双葉十三郎訳で読んで、ほかは全部ハヤカワなのになぜこれだけ創元なんだろうと思った記憶があるが、これはハヤカワから出ている。翻訳権がハヤカワに移管されたそうだ。 ...

レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『さよなら、愛しい人』

村上春樹訳のチャンドラー第二弾。清水俊二訳は既読だが、気持ちいいくらいすかーんと忘れていた。 フィリップ・マーロウは、たまたまムース・マロイという巨漢が殺人をおかすところに遭遇する。彼は刑期を終えたばかりで昔の恋人ヴェルマを探していた。興味をもったマーロウは個人的にヴェルマのことをさがしはじめる。そんなマーロウに仕事の依頼が来る。盗まれた宝石を身代金と引き替えに取り返しにいくから護衛してくれというのだ。受け渡し現場にいったマーロウは背後から殴られ気絶する。目が覚めた彼は、依頼人の死体を発見する……。 ...

レイモンド・チャンドラー&ロバート・B・パーカー(菊池光訳)『プードル・スプリングス物語』

ハードボイルドの旗手レイモンド・チャンドラーが急死したため未完のまま遺された作品を、30年後に同じハードボイルドのスペンサーシリーズで有名なロバート・B・パーカーが完成させた。未完といっても、チャンドラーが遺したのは全41章中の4章だけで、書かれているエピソードはおおむね以下の3つだけだ。 ...

レイモンド・チャンドラー他(稲葉明雄訳)『フィリップ・マーロウの事件』

現代ハードボイルドの書き手たちが、フィリップ・マーロウのキャラクターを借りて書いた短編15編(文庫化にあたり序文や作品8つが割愛されている)と、チャンドラー自身が残したマーロウが登場する唯一の短編(そのほかのマーロウが登場する短編は発表後に探偵の名前がマーロウに書き換えられている)が掲載されている。 ...

レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『ロング・グッドバイ』

はるか昔、清水俊二訳で読んだことはあるが、上品に食べ残された魚のように、頭とおしりの部分がかすかに記憶に残っていただけで、肝心なところはすっかり抜け落ちていた(村上春樹によれば清水俊二訳にはわざと訳されていない箇所が多くあるらしい)。そのときはシリーズ最高傑作という評価に同意しつつも、のどの奥にひっかかった小骨のように割り切れなさを感じたような気がする。だが、今回村上春樹訳で読んでみてそういう割り切れなさがあるからこそ傑作なのだいうことがわかった。 ...