チャールズ・ブコウスキー(青野聰訳)『町でいちばんの美女』

『ありきたりの狂気の物語』と、もともとは一冊の本として出版されたものを、のちに、長すぎるだろうということで、分冊したもの。ときどき既視感ならぬ既読感におそわれたのも宜なるかな。 こちらは30編の作品が収録されている。やはりブコウスキー本人の体験がベースの虚構が薄い作品がメインだが、魔女にとらわれて身体を縮められる『15センチ』、機械仕掛けの人形との悲しく凄惨な恋『ファックマシーン』、人を洗脳して従順にする機械『気力調整機』、アメリカ大統領が連れていかれた先には……『卐』などSFといっていいような作品もいくつか含まれている。『レイモン・ヴァスケス殺し』は実録犯罪小説風だ。 ...

チャールズ・ブコウスキー(青野聰訳)『ありきたりの狂気の物語』

34篇からなる掌編集。どの作品にも作者を思わせる人物が出てくる。ほとんど一人称だし、チャールズ・ブコウスキーと名乗る作品も多い(「ハンク」と呼ばれているのも彼の本名ヘンリー・チャールズ・ブコウスキーのヘンリーの愛称だ)。特に後半の作品にはエッセイといったほうがいいような作品もあって{冒頭の作品が一番虚構度が高くだんだん日常的になっていく感じ)大雑把に私小説集とくくってしまっても間違いではないだろう。まあ、それがどの程度現実のブコウスキーの人生を反映しているかはまた別の話だ。文中酒を飲みすぎでもうすぐくたばるというような表現が何度も出てくるが、彼は1920年生まれで1994年まで生きている。思ったより長生きしてる。 ...

チャールズ・ブコウスキー(柴田元幸訳)『パルプ』

ブコウスキーが死の直前最後に完成させた小説。他の作品は作者の分身が主人公の私小説的な物語らしいのだけど(作者の分身チナスキーは本書のなかでは古書店主の「ついいままで飲んだくれのチナスキーがいたんだ」という言葉の中にだけ登場する)、これは私立探偵が主人公のハードボイルド小説という形をとっている。ただし探偵ニック・バレーンは酒浸りで競馬ですってばかりいる怠け者だ。さえない風采とおいぼれた身体で、ギリギリでその生活にしがみついている。 ...