アンナ・カヴァン(山田和子訳)『アサイラム・ピース』

長編『氷』に続いて二冊目のアンナ・カヴァン。こちらはキャリアの初期に書かれた短編集だ。 短編集というとおもちゃ箱みたいに多様な作品が含まれていることを期待してしまうが、これは一色といっていいだろう。それも極度に陰鬱な色合いだ。表題作の『アサイラム・ピース』は、精神を病んだ患者のための湖畔のクリニックを舞台に、8つのパートに分けて、個々の患者の苦悩を描いた連作短編的な話。 ...

アンナ・カヴァン(山田和子訳)『氷』

急激な氷河期の到来で人類をはじめとする生命が滅亡に瀕するというまさにSF的なシチュエーション。とある国の諜報活動に携わっている男が語り手。彼はアルビノで銀色の髪の少女(といっても20歳過ぎで人妻だが)を偏愛している。ひとり旅だった少女を男は追いかけて小さな国にたどり着く。その国は長官という鋭敏で屈強な男によって支配されていた(熊を素手で倒したというエピソードからプーチンを想像する)。どうやら少女は長官によって保護されているらしい。男は少女に会おうとするがなかなか果たせない。やがて他国の侵攻をいち早く察知した長官は少女を連れて逃げ出してしまう。男は長い時間と労苦のはてに彼らの居場所をたずねる。主人公は少女と再会を果たすが、彼女は彼を拒絶し行方をくらましてしまう。そしてさらに追跡は続く……。 ...