矢のつく地名
Q
江戸川沿いの矢切、多摩川沿いの矢口、矢野口など、川のそばには「矢」のつく地名が多い気がします。何か由来があるのでしょうか?
A
確かに多いです。このほか、府中市の多摩川流域には矢崎という地名がありますし、横浜市鶴見区で南武線の駅名にもなっている矢向も、鶴見川と多摩川のどちらからも近い場所にあります。
矢口の由来のもっとも有名な説は、日本武尊が東征の途中矢合わせをした古跡で、もと矢食村と呼ばれていたのがなまったと伝えられている、というものです。矢切にも似たような俗説があります。1538年(天文七)年 国府台(こうのだい)合戦で、里見氏側の矢が切れたせいで北条氏が勝ったので矢切という地名が生まれた、というものです。
これらの説を信じるとすると、川沿いは戦場になりやすいので、矢がつく地名が多いということになります。戦場になりやすいのは事実でしょうけど、それがあちこちで地名を生み出すほどのインパクトをもつとは思えません。
実は矢切の由来にはもっと有力な説があります。谷が切れたところの地形を表す「谷切れ」という言葉からきているというものです。実際、上記の国府台の合戦以前の文書に「ヤキレ」という表記がみられるようです。
多摩川の方の「矢」に関しては川崎の地名というページに「矢のつく地名は川べりによく見られ、湿地を意味する場合がおおい」という記述がありました。
というわけで、湿地にせよ谷にせよ、川沿いの特徴的な地形からきていることはまちがいないようです。