エスラボ『みかん』

作・演出:赤堀雅秋/ザ・スズナリ/指定席3000円/2004-02-07 20:00/★★

出演:なすび、小池竹見、児玉信夫、玉置孝匡、菅原永二、ぼくもとさきこ

THE SHAMPOO HATの旧作を改編して、THE SHAMPOO HATメンバー自ら演じるバージョン(ザ・シャンプーバージョン)、外部からの客演バージョン(ザ・コンディショナーバージョン)の2バージョンでお届けしようという企画。手堅さからいえば、シャンプーバージョンなのだが、赤堀雅秋がTHE SHAMPOO HAT以外の役者にどんな演出をつけるのかというところに興味をひかれて、ザ・コンディショナーバージョンの方をみたのだった。玉置孝匡、ぼくもとさきこなどふだんよくみる役者に加えて、なすびが出ている。

本題に入る前に、THE SHAMPOO HATの作品を何作かみてきて、いくつか気づくことがあったのでそれについて書こう。

まずはセリフまわし。青年団が現代口語演劇といっているけど、あれは教養ある若者の言葉で、むしろ赤堀雅秋の書くセリフの中に、年収300万円時代の今のリアルな言葉を感じなくもない。それは決して相手に届くことはなく、何度なげかけても「エッ?」と疑問符がかえってくるだけで、最後は「ああ」と意志の疎通に失敗したことだけを了解しあうのだ。

次に、唐突に「超越的なもの」が描かれること。赤堀雅秋の作品の登場人物はほとんど静かな絶望(居心地の悪さといってもいい)の生活を送っていて、それは永遠に続きそうに思われるんだけど、思ってもいなかった場面でかすかにその日常が裂けて、はるか上を見上げる視線がうまれる。

あと、「飛び降りる」場面がとにかく頻出すること。高いところから飛び降りて、傷だらけになって戻ってくるシーンがこれまで何度も描かれている。

さて、ようやく今回の芝居。人気のない元旦の街、警察の独身寮の屋上が舞台。そこを都おずれて、洗濯物を干したり、とりこんだり、背中を床にこすりつけたり、「わたしが神です」と付近に向けて演説をしたり、演説を通行人を監禁したりする若い警官たちの姿……。

今までの作品に比べるとライトで、その分「超越的なもの」も必要とされないし、恒例の飛び降りも同工異曲であまりインパクトがないのが少し残念だった。