パリ市立劇場『犀』

パリのテロ直後のタイミングでパリ市立劇場の公演を見ることになるとは。突進してくる犀から逃げ惑う人々にテロの恐怖を感じずにはいられなかった。演出家はテロの影響で来日できなかったそうだ。

1960年にイオネスコが書いた作品。青年時代故郷のルーマニアでのファシズム勃興の記憶がベースになっているらしい。周りの人々が犀(=ファシスト)に変化していくさまが象徴的に描かれている。犀は自然の象徴だが、ファシストも何かと自然を持ち出すのだ。

テロの記憶が新しいので、犀という存在がとても生々しく感じられた。テロリストも犀だが、その反動で過激な行動に走るのもまた犀だ。

演出はとてもユーモラスだった。カーテンコールもサービス精神満点で役者たちが舞台をしばらく跳ね回っていた。

席が前の方だったので舞台と両端の字幕を両方見るのが大変だった。ああ、フランス語がわかればなあ。

作:Eugène Ionesco、演出:Emmanuel Demarcy-Mota/彩の国さいたま芸術劇場/S席5400円/2015-11-21 19:00/★★★

出演:Serge Maggiani, Hugue Quester, Céline Carrere, Philippe Demarle, Charles-Roger Bour, Jauris Casanova, Sandra Faure, Gaël Guillou, Salah Karbasnikoff, Stephane Krähenbühl, Gérald Maillet, Walter N’guyen, Pascal Vuillemot