重力/Note『リスボン@ペソア』
最初にはじめたのが誰なのかほんとうのところはわからないが、ぼくがこれまでみてきた範囲でいうと、チェルフィッチュが痙攣的な身体だの動き、振りつけとともにセリフをいう方法をはじめ、京都の劇団地点が、セリフに奇妙な抑揚や強弱をつけて異化する方法を編み出し、それを既存の戯曲に適用した。今、この二つの方法はそれなりに広く広まっているようだ。重力/Noteは初見でふだんはどうかわからないが、今回の公演ではその系譜に連なる手法をうまくとりいれている。
まず、今回とりあげたテキストはペソアなので、そこは無条件にすばらしい。なにしろ、日頃からペソアのテキストを目にするにつけ、これはぼくが書いたのではないかと奇妙な錯覚にとらわれてしまうくらいなのだ。5人の俳優(男3人、女2人)がグレーの帽子、白いスーツといういでたちでペソアに扮して、ペソアのテキストを発話していく。これは複数の筆名、異名を使い分けたペソアという人間によりそった演出だ。寄り添ったテキストの素晴らしさはおいても、めりはりをつけて決して観客に退屈を感じさせないようにうまく構成されていた。圧巻はクライマックス近くで、女性(すいません、顔と名前が一致しない)がわざと口ごもるみたいにテキストを断片化して繰り返すシーンで、それまでのシーンと対照的にほぼテキストが意味を失う。このシーンの、極端なくらいの長さが、アクセントになっていた。
原作:フェルンダンド・ペソア(翻訳澤田直)、構成・演出:鹿島将介/BankART Studio NYK/NYKホール/自由席2500円/2013-06-15 14:00/★★★
出演:稲垣干城、井上美香、瀧腰教寛、立本夏山、邸木夕佳