パルコプロデュース『ヒッキー・ソトニデテミターノ』
かつて自身が引きこもりだったという岩井秀人が、引きこもりの青年たちとその家族、彼らの社会復帰を手助けする団体の人々を多面的に描いた作品。自身の引きこもり時代を描いた『ヒッキー・カンクーントルネード』の続編ということらしいが、そちらは未見。
引きこもりという現象を通して、人間、セカイ、希望、絶望について考えさせる作品になっていた。
引きこもりの当人たちが陥っている対人関係に関する「完璧主義」をみてると、ぼくが引きこもりにならなかったのは巡り合わせにすぎなかったなと思えてきた。どちらが原因で結果なのかはそれぞれだと思うが、引きこもりの人がいると家庭全体が病気にかかったような特異な症状を示すようになる。なんとか見いだした「日常」にしがみつき、そのいびつな習慣から離れられなくなる。それも見覚えがある風景だ。きれいごとだけじゃなく、当事者がほかの当事者に対して抱いている優越感、差別感情や、本人が回復して旅立っていくときのせいせいするという家族の真情など、痛いくらいリアルで立体的だった。
引きこもりから脱して今は支援団体で働く青年を演じた吹越満さんの演技がとにかくすごかった。
作・演出:岩井秀人/PARCO劇場/指定席6500円/2012-10-13 19:00/★★★★
出演:吹越満、古舘寛治、チャン・リーメイ、有川マコト、占部房子、小笠原康二、田村健太郎、金原祐三子、岸井ゆきの