青年団リンク 水素74%『不機嫌な子猫ちゃん』

不機嫌な子猫ちゃん

作・演出:田川啓介/アトリエ春風舎/自由席2500円/2012-02-18 19:00/★★

出演:兵藤公美、村井まどか、折原アキラ、義積元、井上三奈子

他人の愛情や承認がないと生きていけない人ばかりが出てくる芝居。

30歳になった一人娘市子のことを過剰に心配する母親愛子。最初、その檻のような愛情から市子が逃れ自立しようとする話かと思ったが、さにあらず。市子は反抗しているように見えるが、実は母親の愛情に依存していて、彼女の反抗や逸脱も母親の愛情がほんとうに無条件なものかどうか試すためなのだ。

そのほかの登場人物も同様だ。愛子の年の離れた弟隆史も父親、夫、娘、嫁などなんらかの役割を家庭内で担うことで自分のアイデンティティを得ようとしているし、市子が出会い系で知り合った天涯孤独な男中島は敵ばかりの世の中でたったひとりの味方を得ようとしている。後半登場する市子の友人道子もまた、母親の愛情に飢えている。

この芝居では、そうした愛情や承認の対象は結局のところ簡単に入れ替え可能なものだということがいわれる。それはシニカルといえばシニカルだけど、ぼくにはとても開放的なことに感じられた。