M&Oplaysプロデュース『鎌塚氏、放り投げる』
作・演出:倉持裕/下北沢本多劇場/指定席6000円/2011-05-14 19:00/★★
出演:三宅弘城、ともさかりえ、片桐仁、広岡由里子、玉置孝匡、佐藤直子、大河内浩
倉持裕さんの『演劇の地平をならせ』(PDF)という論考を大変興味深く読んで、エンタメ系とアート系に二極分化しつつある演劇界で中間層として踏みとどまるという決意を、観客の一人として拍手をもってむかえたい気持ちになったところで、観劇。
さて本作は完全なエンタメ系。カズオ・イシグロ『日の名残』を彷彿とさせる、執事が主人公の物語。引退した父が仕えていた伯爵家に後任として赴任した有能な執事鎌塚アカシは、主人、賓客から無理な頼み事をされてのっぴきならない状態に追い込まれる。そんな中、再会したばかりの、かつて密かに思いを寄せていた女中頭から近々結婚退職しますと宣告されて……。
深みはないけど、とてもよくできたコメディー。純粋に楽しめた。これくらいの規模の舞台の主役を務めるようになった三宅さんの進境著しさに目を細めながらも、片桐仁さんと広岡由里子さんの存在感がとにかくすごかった。
深読みし過ぎかも知れないが、執事という上流階級と庶民の間に位置するような職業を、「中間層」としてエンタメ系とアート系の間で四苦八苦する自分たちの世代の演劇人を重ね合わせたようにも感じられた。