『華麗なる招待 - The Long Christmas Dinner -』(Tree version)

『華麗なる招待 - The Long Christmas Dinner -』

原作:ソーントン・ワイルダー、誤意訳・演出:柴幸男/STスポット/指定席2500円/2010-07-31 19:30/★★★

出演:立蔵葉子、大石将弘、召田実子、坂口辰平、武谷公雄、青柳いづみ、後藤飛鳥、大重わたる、高橋ゆうこ、狩野和馬、黒川深雪、白川のぞみ

チケットは、季節外れのクリスマスディナーの招待状。そして案内されたのは、白いクロースに覆われた巨大なテーブルを囲む席。目の前には食器とワイングラス。一瞬あっけにとられたが、ぼくもまた今宵このクリスマスディナーに招待された賓客の一人なのだということに気がついた。与えられた役割は、乾杯の音頭に合わせて、何度か空のワイングラスを隣の人と重ねるだけだけど、自分がこの場に参加しているという感覚を与えてくれるのであった。

ベヤード家というアメリカ東部で工場を営む家族の何十年にもわたるクリスマスディナーパーティーを連続してみせてゆく。ある家族と家の歴史が、クリスマスディナーパーティーの中に凝縮して表現されている。

誕生そして死。それぞれの表現がすばらしい。ある決まった出入り口から看護婦に抱かれた赤ん坊の姿で入場するのが誕生であり、隣の出入り口から退場するのが死を意味しているのだ。

おいしいディナーのあとみたいに満ち足りた気分になれる芝居だった。

ジャナビーブを演じた青柳いづみさんが特によかった。涙をぽろぽろ流していたが、あの涙があのシーンでなくてはならないとは思わない。だからこそ、逆に妙なリアルさを感じて、ぞくっとしたのだ。