はえぎわ『幸子っていうんだほんとはね』

幸子っていうんだほんとはね

なんと15年ぶりのはえぎわ。

セットのない素舞台に役者が勢揃いしてバックステージツアーのシーンからはじまる。空っぽの舞台にたくさんの役者。そのアンバランスさにかすかに不安になるがちゃんと物語が始まった。

最初5つの物語が5つの場所で独立に進んでいく。下北沢で不意に手を繋いで離れなくなってしまったおばさんと若者。手違いでゴミ回収の業者に腕を撃たれて監禁されてしまう主夫男性。次回作がなかなか書けない絵本作家と編集者。拾ったノートに導かれて逗子や箱根を巡っていく男女。山奥でひとりで暮らす男が記憶をなくしたホームレスらしい男を見つけて世話をし、二人で自分のふるさとの下北沢を訪ねることになる。これらの物語はやがて交錯し、二つの家族の物語に収束していく。

これらの物語の進行に合わせて、下田昌克さんという画家の方による墨絵のリアルタイムペインティングが行われる。それがちょっとふわっとした抽象的な物語に詩情とリアリティーを与えていたと思う。

役者が皆器用かつパワフルでしっかりとリアリティーを下支えしていた。

作・演出:ノゾエ征爾/本多劇場/指定席6000円/2025-03-01 18:00/★★★

出演:町田水城、竹口龍茶、踊り子あり、鳥島明、富川一人、山口航太。ノゾエ征爾、串田十二夜、山本圭祐、東野良平、柴田鷹雄、笠木泉、高田聖子、下田昌克