ロロ『あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語』
ロロの読み方もはっきりしないまま(クチクチやシカクシカクの可能性を排除できなかった)初観劇。同じ姓の三浦大輔との連想からワイルドでドロドロした芝居を想像したり、タイトルから喪失感あふれる恋愛ものを想像したりしていたが、どちらも全く的外れでいい意味で裏切られた。
一言でいえばメルヒェン。そして二言目にもメルヒェンだ。一つの靴紐を共有する母「花びら」と娘「未咲」。花びらは未咲が生まれてすぐにどこかにいってしまい未咲は顔も知らない。なんと靴紐には人格があり「結び目」という名前がつけられている。母が子供から成長してゆく様と、娘が母の生まれ故郷を訪ねる冒険譚がオーヴァーラップして進んでゆく。
現実世界の困難や汚さを感じさせないこういうユートピア的な世界の物語悪くない。
久しぶりに見た伊東沙保さん、相変わらず透明感あるふわふわした役柄がぴったりあっている。あと、古屋隆太さん演じる父親「波打ち際」がいい。(リアルな)罠を仕掛けてとことん待つのが趣味であり生活の糧でもある。社会性はなさそうで紙コップに鳩の糞が落ちるのを待つ調査員をやっていたりする。
夫婦二人で娘の名前を決めるときに待つことを意味するような名前がいいという結論になって、その時はよくわからなかったのだけど、漢字の「未咲」という名前を見て納得した。
作・演出:三浦直之/東京芸術劇場シアターイースト/自由席3000円/2016-05-21 19:00/★★★
出演:伊東沙保、望月綾乃、西田夏奈子、古屋隆太、板橋駿谷、亀島一徳、篠崎大悟、島田桃子、森本華