innerchild『i/c』
作・演出:小手伸也/吉祥寺シアター/指定席3500円/2008-11-23 19:00/★★★
出演:小手伸也、菊岡理紗、石川カナエ、佐藤誓、成清正紀、森岡弘一郎、新井友香、二村愛、井俣太良、狩野和馬、小暮絹誉、中谷千絵、初谷至彦、松崎映子、大沼優記、北川義彦、熊本昭博、木場允視、草風なな、久保田綾子、坂本文子、松尾恵、和田真希子
innerchild はぼくが定期的に観にいっている劇団の中では一風毛色がちがっていて、ひねくれたぼくとは真逆の、ストレートでわかりやすい表現のウェルメイド系に含まれると思う。それでも欠かさず観てるのは、古今東西のさまざまな物語を背景にストーリーがとても巧みに構成されていることと、そこにしっかり深みのあるメッセージが含まれているからだ。
女手一つで育ててくれた中国出身の母親が他界してから、中年サラリーマンの翼は子供の頃からの鳥恐怖症が悪化して悪夢に悩まされるようになった。それが高じて妻や息子の間もぎくしゃくしてくる。彼が生まれる前に失踪した報道写真家の父親が残したという写真を手がかりに、父親と母親が日本にたどり着くまでの道のりを逆にたどることで、彼は自らの誕生の根源に迫り、息子に語るための真実を得ようとする。香港、コルカタ、カトマンズ。さまざまな人々に助けられて、彼はとうとうすべてのはじまりの土地、チベットにたどり着く……。
できるだけ主人公の視点から物語を語ろうとしたことで、いたずらに複雑になることなく、いい意味でとてもわかりやすい舞台になったのではないだろうか。以前から役者が若干力不足なのが欠点だと思っていたが、今回は、外部からベテランの役者を配することで、かなりパワーアップしているように感じた。
転生というオカルト的な題材を扱っているんだけど、得てして、そういうのは内向的で陳腐なメッセージを唾みたいにはき出すだけで終わってしまうところを、ちゃんと、魂というのは一人の人から多数の人にふれあいの中で伝わっていくものだというように転生の意味を組み替えたり、国というのは親じゃなく、これから自分たちで育てていかなくてはいけない子供なんだ、といったりしていて、けっこう心だけじゃなく頭にも響いてきた。そのあたりにちょうどぼくの琴線があるのだ。