消えた痛み

麻酔されて虫歯の治療をされているときに思ったのだけど、今ぼくが感じているはずの痛みはどこにいってしまうんだろう?もし、麻酔をされていなかったら、悲鳴をあげて恥ずかしいだけでなく、痛みは確実にぼくの心身をむしばんでひどく消耗してしまうのは間違いない。麻酔により神経が麻痺している間にも、歯は確実に痛くなるようなことをされているわけで、その痛みがどこへともなく消えてしまい、本来消耗してしまうはずのぼくが平気でいられるのはちょっと不思議な感じがした。

きっと、言葉やお金のように、痛みとはいうのは実体がないものなのだろう。実際、それは身体の部位が心(脳)に向けて送る信号に過ぎないわけだ。でも、それならもっとスマートな信号でもよかったような気がする。たとえばウルトラマンのカラータイマーなんて理想的だ。胸のあたりにあってふだんは緑色だけど、調子が悪くなると赤く点滅する。音がでるから服をきていてもわかる。でも、電車のなかではマナーモードにしろとかいわれてしまうかもしれない。