四月の魚
フランスやイタリアではエイプリルフールのことを「四月の魚」と呼ぶ……。
いつもはただ通り過ぎてしまう橋の上から身を乗り出している人たちがいる。その中にまじって水面を見下ろすと、水の代わりに魚がながれていた。体長10cmほどの小さな魚たちが何千匹もひしめきあいながら上流をめざしているのだ。この先には高速道路にふたをされた暗い流れが続き、やがて水は干上がってしまうはずなのだが、魚たちしか知らない道があるのかもしれない。
その魚たちは毎年きまって4月1日に姿をあらわす。見たといっても誰も信じてくれないので、このあたりでは「四月の魚」という名前で呼ばれている。