『アリス』の家族
続けざまに『花とアリス』の話題。
「花」と「アリス」という2人の少女の物語で、鈴木杏と蒼井優が演じると聞いたときには、バタくさい顔の鈴木杏が「アリス」だと思いこんだが、実は「アリス」は和風顔の蒼井優で、フルの役名が「有栖川徹子」だから「アリス」なのだった。「花」の家族については母親がコミカルに下着姿で出てくる以外は特に触れられていないが、「アリス」の家族についてはかなり細かく描かれている。画面からわかることをまとめてみよう。
アリスは母親と二人暮らしであり、父親とは別れて暮らしている。有栖川という姓も母親のものだ。花を含め、アリスの幼い頃の友人たちがみな「アリス」と呼んでいるところからみて、両親の離婚はアリスがかなり小さい頃だったと思われる。
母親役は元ウィンクの相田翔子。いつまでもふわふわと少女気質が抜けない人物として描かれていて、ファーストフードの店で連れの男性(阿部寛)といっしょのときにアリスとばったり出くわし、アリスを隣の「花ちゃん」と紹介したあと、「さよなら」を連呼してその場から追い払おうとする。それだけきくと相当ひどい母親のようだが、「花ちゃん」と別の名前で呼んだところをみると、少なくとも自分に徹子という名前の娘がいることだけは相手に告げていることがわかる。ただ、高校生くらいの大きな娘がいるとはいってなかったのだろう。でも、このあと、「友達」を呼ぶから日曜日には家にいないでほしいと、アリスにいうシーンがあったりする。
父親役は平泉成。相田翔子とは父と娘くらい歳が離れているが。鎌倉の鰻屋で入学祝いとして万年筆を贈るときの口上がとてもいい。余計な力が入っていなくて、じわじわしみだしてくるおかしみがある。アリスも父親のことが大好きで、別れ際に教えられたばかりの中国語の愛の言葉「ウォーアイニー」を大声でいう。でも、もし父親と暮らしていたら、アリスは「アリス」ではなかったのだ。