エピソードリスト

悪魔のような女たち

菊地、弘子とお見合いをするがやんわりとその場で断られる(新高輪プリンスホテル)。

海外に左遷される部下を慰めるため、会社の悪い噂をもらすが、それがひょんなことから専務の耳に入ってしまう。「一生係長に塩漬けだ」といわれた菊地は会社をやめることにする。

友人の小野の家に報告と相談にいった帰り、バス停(三軒坂という名前)で携帯電話を拾う。

家に帰ってみるとマンションの前で、お見合い相手の弘子が待っている。早々と会社をやめたことを聞きつけ、店(アンティークショップ)を手伝ってくれないかともちかける。とりあえず一度店にうかがうという菊地。

深夜。拾った携帯電話に着信。相手の若い女(美香)は、明日会って渡してほしいという。

弘子の店にいくと、弘子の恋人の滝口がいた。自分とのお見合いが彼へのあてつけだったことを知る菊地。菊地は仕事をひきうけると伝える。

美香と待ち合わせて携帯を返すが、変な男につきまとわれているといわれ、途中まで一緒にいくことにする。ちょうどホテルの前にさしかかったところで、美香の仲間の洋介たちから写真を撮られてしまう。オヤジ狩りにひっかかったのだ。脅されるが、会社をやめ、独身の菊地には何の効果もない。だが、菊地はとてつもなく寂しい気分になる。

その場を去る菊地に声をかけてきたのは、美香の義理の兄の小池新一と名乗る男。菊地は相手にしなかったが、この男と知り合わなければ、美香と菊地の関係はそれだけで終わってしまったことになる。

通勤用の自転車を買ってマンションに帰ると、今日隣の部屋に引っ越してきたという女性に挨拶される。なんと、それは15年前に二股をかけて菊地を振った昔の恋人千里だった。ベランダから隣の部屋をのぞいて、千里の娘ののりこの存在に気がつく菊地。

女たちのあえぎ

朝。菊地の部屋に隣に引っ越したきた千里が訪ねてきて、朝食に作ったカルボナーラ(!)を食べてほしいといわれる。断るが無理矢理おいていかれてしまう。いまだに昔の呼び名「ミシェール」と呼ばれることに当惑する菊地だが、自分も千里の昔のニックネームの「ちわわ」しか思い出せない。

初出勤。一通り弘子の説明を聞く菊地。弘子が所用で出かけたあと、菊地は美香の義理の兄を名乗る男小池新一に電話をかける。

滝口が店にやってきて、弘子にイヤリングを返して欲しいという。わざとポケットの中に入れられたようだが、そういうことをされると頭をかかえてしまうという。さらに、自分は弘子と別れるつもりだということを菊地に告げ、それとなく伝えて欲しいといわれる。

弘子と二人で初出勤の記念の昼食をとったあと、小野が菊地の様子を見に店にやってくる。が、弘子は顧客からの急な呼び出しで出かけなればならなくなり、菊地も小池新一がやってきたので外へ出て行き、小野が留守番をすることになる。

喫茶店で小池新一と話す菊地。小池のパワーに押され、タッグを組んで、美香を悪の道から救い出すことになる。菊地は美香のアルバイト先のサンドイッチ屋の場所を聞く。

小野が留守番をしていると坂口俊子(弘子の亡父の恋人)が店にやってくる。彼女は弘子の父のことを話そうとするが、無論小野は彼のことを知るはずもない。俊子は、自分がここにきたことは内緒にしてほしいといって、去っていく。

仕事のあと、菊地は美香のアルバイト先のサンドイッチ屋にいく。菊地がサンドイッチとコーヒーを注文すると、美香は動揺した。美香の仕事が終わるまで待って、そのあとをついていく菊地。美香は我慢できず、「何なの?」とたずねる。菊地はこの前とられた写真がほしいという。

翌日。菊地はそれとなく弘子に滝口はやめておいたほうがいいという。だが正面から反論されて、謝る以外何もいえなくなってしまう。

帰り。美香の店に向かおうとする菊地を滝口が呼び止め、なにやら煮え切らない態度で引き止める。振り切って美香の店に向かうがもう間に合わず閉まっていた。

滝口の車の中。ようやく滝口は自分から弘子に別れ話を切り出す。「親父以外の男も少しは尊敬できるようになれよな」がダメ押しの言葉。

傷心の弘子は菊地を訪ねるが、まだ帰宅しておらず、千里に声をかけられる。

帰宅した菊地は隣家のベランダにいる弘子の存在に驚く。

謀略のうずまく夜

弘子は千里の部屋で菊地の帰りを待っていたのだ。菊地は自分の部屋に招きいれ話を聞こうとするが、千里までついてくる。なんとか千里を追い出す菊地。話を聞き終わって、菊地は大通りまで弘子を送ってゆく。別れ際、明日が定休日であることを告げられる。

休日の昼。菊地は美香の勤めるサンドイッチ屋に向かう。できたばかりの名刺の裏に自宅の電話番号を書いて渡す。美香が昼休みになるのを待って、話しながら一緒についてゆこうとする。背中に強い衝撃を感じて倒れる菊地。美香の仲間の鈴木が、美香に脅しをかけていると思って殴りかかってきたのだ。美香はその場から去り、残された二人はとりあえず誤解を解く。「美香にほれちゃったの?・・・やめた方がいいよ。自分の年考えてみなよ」といわれて菊地はうろたえる。

夜になって、菊地は小野と屋台のおでん屋で飲みながら、小野が留守番をしているときに訪ねてきた俊子の話をする。一方、弘子と千里はベトナム料理店で食事。千里は、自分と菊地が昔は恋人同士だったということを打ち明ける。

美香と仲間たちは、オヤジ狩りでひっかけた男から逆に追いかけられ、夜の街を逃げてゆく。洋介と二人きりになる美香。美香は自分の部屋に寄らないかと洋介を誘うが、洋介は断る。美香は一人でアパートの部屋に帰る。大家から立ち退きをせまられてその部屋は今月中に引き払わなければならない。

次の日の朝、出勤した菊地は、弘子を、小野と三人の食事に誘う。傷心の弘子を慰めようというのだ。菊地はその前に、今日売れたばかりのテーブルを田端までとどけにいくことになる。

田端にいって、菊地はテーブルの届け先が、俊子の店であることに気がつく。菊地はお金目当てかも知れないと考え、それとなく弘子の店には資産などないことをいうが、俊子に泣かれて弱って、逃げ出すように店を出る。帰り道歯が猛烈に痛み出し、弘子と小野と三人の食事を断って家に帰ってしまう。

小野と弘子は二人だけで食事にいく。最初は気まずい雰囲気が漂うが、菊地のことを話題にするうちに少しうちとけてゆく。

美香はバーに小池新一を呼び出し、なぜ菊地に自分のバイト先を教えたか問い詰める。小池の話から、自分が部屋を追い出されるのが、小池が大家に告げ口をしたせいだとわかる。自分の部屋に来いという小池を罵って店を出てゆく。

菊地は部屋に帰ると、千里からもらった鎮痛剤を飲んで、うとうとしてしまう。千里はまだ部屋に残って、菊池の寝顔を見て昔のことを振り返っている。すると突然の電話。千里はつい受話器をとってしまう。相手は美香で、女性が出たことを意外に思いながらも、自分の名前と、写真ができたとお伝えくださいとだけ告げる。

振りまわされて嬉しいなんて

菊地は目を覚まして、勝手に電話をとった千里を怒る。千里は捨て台詞を残して出て行く。

次の朝。出勤してから、菊地はエプロンを俊子の店に忘れたことに気がつく。弘子は菊地が昨夜小野と弘子と三人で飲む約束をすっぽかしたことをなかなか謝ろうとしないので、お冠。ようやく気がついて謝ると、俊子からエプロンのことで電話があったことを教えてくれる。弘子はそのときの俊子の態度に不審なものを感じ始めている。

昼休み。菊地は美香のつとめるサンドイッチ屋にでかけ、例の写真を受け取る。ちょっと時間いいですか、と連れていかれた公園で、美香からアパートの保証人になってほしいとお願いされる。そのとき、小池新一が、美香の義理の兄などではなく高校のときの教師で、高校を中退した美香を追いかけて東京まで出て来たのだと知る。

俊子から弘子宛てに赤いグラスが送られてくる。弘子の父が使っていた青いグラスとお揃いだ。弘子の気がかりがはじまる。

店にやってきた滝口から、弘子が家具の仕入先を滝口の店からナガヤマという業者に変えようとしていることを告げられる。大手だがあまり評判のよくない業者らしい。菊地は弘子からちゃんと話を聞いておきたいと思うが、きっかけをつかめない。結局、閉店後、滝口を訪ねてくわしい話を聞く。

洋介の行きつけの店にいった美香はそこに洋介がいるのを見て喜ぶ。だが、美香は洋介の卑屈な態度にいらついて、ついひどくあたってしまい、渡そうと思っていた腕のいい歯医者の地図を投げつけてしまう(洋介も歯が痛かったのだ)。

夜、菊地が美香の部屋の契約書に署名捺印しながら部屋でくつろいでいると、隣から激しく言い争う声。菊地の部屋まで入ってきての親子喧嘩に辟易としながらも、気になった菊地は、翌朝千里の部屋のインターフォンをならした。のりこが同級生に学校をやめようと誘ったのが言い争いの原因らしい。同級生の親に謝りにいくのに、のりこの父親のふりをしていっしょについてきてほしいと頼まれる。

出勤途中、菊地は署名捺印した契約書を美香に渡す。不動産屋に契約書を提出したあと、美香は菊地の写真を撮ってくれる。「一たす一は?」「五」

昼休み。菊地が弘子に紹介された歯医者にいくと洋介と鉢合わせになる。菊地は君たちと勇気づけられたという。洋介は順番を代わってくれる。

美香が引越しの支度をしていると、小池新一が不意に訪ねてくる。美香は引っ越すことを告げる。説教まがいのことをいう小池に、美香は凛とした態度で臨み追い返す。

弘子から俊子のところに椅子を届けてほしいといわれ、菊地は小野と二人で店に乗り込む。ところがそんな椅子のことは知らないといわれ、狐につままれる二人。弘子が嘘をついたのだ。菊地と小野は、俊子の口から亡くなった弘子の父親のことを聞く。イタリアに家具の買付にいったときに船の中で、泥酔して転落し、結局遺体は見つからなかったとのこと。

美香は血を流しながら地下道から這い上がってくる洋介とすれ違う。どうやら、美香たちのやっているオヤジ狩りが、ほかのグループから目をつけられ、殴られたらしい。これ以降オヤジ狩りはできなくなる。

菊地は帰宅して隣室からのりこの声に呼ばれベランダで話す。のりこから「一日お父さんになってくれるってほんとう?」と聞かれて、同級生に謝りにいく件を断れなくなる。のりこは将来女優になるのだという夢を菊地に打ち明ける。「女優になる前のわたしとこんなお話ができて幸せね」といわれて「確かに幸せだな」とうなずく。

ちわわの猛アタック始まる

朝。朝食の買出しから戻った菊地は千里から、再度、明日いっしょにのりこの同級生の家に謝りにいってほしいと頼まれる。しつこさに声を荒げる菊地だが、シチューをおすそわけされたりして、結局明日一日は野村昭夫としていっしょにいくことになる。

出勤。弘子は昨日嘘をついて菊地に俊子の店にいってもらったことを謝る。菊地は弘子を安心させるため、俊子は弘子の父と深い付き合いじゃなかったんじゃないかなと嘘をつく。

美香の引越し完了。手伝いの鈴木(美香の仲間)と蕎麦屋で引越しそばを食べるシーン。

弘子は小野を呼び出して、菊地が俊子に犯罪暦があるといっていたと、かまをかける。まんまとそれに乗った小野は、二人は真剣に愛し合っていたと思いますと告げてしまう。

戻ってきた弘子から、菊地は、美香の引越し祝いにするための花瓶を買う。「安くしませんよ」といわれてよろける菊地。

夜。弘子はひとり俊子の店を訪ねる。俊子は、弘子の父とのことは思い出として胸にしまって、常連の清水という男と結婚するつもりだと、弘子に告げる。

美香は、怪我のため安静にしていた洋介が行方不明になったというのを聞いて、行きつけの店を探し回るが見つからない。が、家に戻ると、洋介が缶ビールをもって待っていた。

菊地はプレゼントを渡すため、美香のアパートにいくが、ドアの前で、美香と洋介の争う声を聞いてしまう。洋介が「好きだ」といって抱きついてきたのを、酒の勢いで軽く扱われていると感じて、怒ったようだ。部屋から出てくる洋介に見つからないように、菊地はあわてて階段をおりるが、そのとき花瓶を落として割ってしまう。

翌日の朝。菊地はスーツを着て、のりこの同級生の家に行き、無事務めを果たす。

美香は、保証人のお礼にサンドイッチをもって店にいくが、菊地がいないため、弘子に渡す。

また夜。行きつけの食堂で、日めくりの「勇気をもって前に進めば道は開ける」という言葉を見た菊地は、美香の勤めるサンドイッチ屋に向かう。ちょうど帰り道の美香とばったり会い、菊地は食事に誘う。菊地は、自分のしていることのばかばかしさに、いったんは食事をやめようというが、美香に励まされ、二人で街に出る。

仕事帰りでタクシーに乗る千里は、菊地と美香が歩いている姿を目撃して、あわててタクシーからおりる。

これが最後の恋になるなら

定休日。菊地は美香と二人で河原までサイクリングにでかける。

千里は昨夜の菊地と美香の行動(プリクラで写真を撮ったこと)を弘子に報告する。

菊地は美香が入学したいという写真学校までつきあう。学費は何と120万円。菊地は美香の力になりたいと思う。

菊地と別れた美香は小池新一に見つかってしまうが、逃げ切る。

夜。菊地の方は美香のアルバイト先のつてをさがしに小野の家に行くが、小野は不在。間の悪いことに、その小野から、今菊地と飲んでいるという電話がかかってくる。実は、小野は弘子と二人で食事をしていたのだ。

美香は洋介と二人でツーリングに出かける。バイクは友人の鈴木のもの。夜のお台場。

菊地の部屋に小池新一がたずねてくる。美香のことで相談したいそうだ(菊地は美香のことを小池にまったく報告していない)。一晩、酒を飲みながらいいたいことをいって、泊まってしまう。朝、小池は偶然菊地と美香が撮ったプリクラの写真を見つけてしまう。菊地に朝食を届けにきた千里は、美香と同姓の小池という姓を聞いて、とりみだして盆をおとしてしまう。

弘子は今まで仕入れを頼んでいた滝口の店をやめて、ナガヤマという大手の業者から仕入れをするが、粗悪品をつかまされてしまう。菊地は滝口に相談し、なんとか買った値段でひきとってもらえることになる。

洋介がバイクで人をはねたという知らせをきいてあわてて病院にとんでいく美香。洋介は昨夜美香が食べたいといっていた柿を届ける途中事故をおこしたらしい。被害者の治療費90万円を払わなければいけないと聞いて、途方にくれる。

小野と二人で定食屋で夕食を食べる菊地。美香への想いを告げる。「これがおれの最後の恋かもしれない」。

小野に美香をみせるため、二人は美香の新居にいく。菊地は美香に学費を貸してあげたいと申し出、美香はそれを受ける。小野は小野で、弘子に対する(一方的な)気持ちを告白する。

俊子が弘子を訪ねてくるが、弘子はすげない態度をとる。

菊地が帰宅すると、小池新一が待ち伏せをしていて、襲いかかられる。が、物音を聞きつけてやってきた千里は一撃で小池を撃退する。暗闇の中、小池が倒れているその横で、千里は菊地に結婚を申し込む。

お人好し、大金を貢ぎ裏切られる

菊地は千里のプロポーズをその場で断る。なりゆきでのり子の父親が誰かという話になるが、結局わからないまま。

弘子の家を尋ねた俊子は、あなたのお父さんがどこかで生きていると考えたことはないかと唐突に言い出す。弘子は怒って、「そう思うのは自分が弱いからだと思ってここまでがんばってきた」という。

小池は意識を取り戻してもう一度菊地に襲いかかるが、撃退されて、家からでていく。

翌朝、小池は千里の部屋を訪ね、菊地と美香の関係について相談する。

日曜日だというのにはやらない、アンティークショップアオキ。菊地は古いパンフレットを見つけ、新しく作り直したらどうかと弘子にもちかける。

美香は仲間の鈴木とめぐみに呼び出され、洋介の借金を払うためもう一度オヤジ狩りをやらないかと誘われるが断る。めぐみは、美香が仲間に入ったときから洋介がおかしくなったと言い捨てて去ってゆく。

のり子がアオキに訪ねてくる。カタログ業者に話をききにいくついでに、菊地はのり子を送っていくが、千里のプロポーズを断ったことを問い詰められる。菊地は「大人の関係」と答える。

入れ違いに小野がアオキにやってくる。小野の目当ては菊地ではなく弘子だ。小野は壊れた家具の修理を引き受ける。菊地から電話があるが、小野は自分が帰ったことにしてほしいと弘子にメモを渡す。

業者の帰り、菊地は美香と待ち合わせ、写真学校の学費を渡す。菊地は業者で美香のバイト先を見つけてきており、明日一緒にいこうという。

小池は菊地と美香のことを、洋介にまで告げ口しようとするが、「恥ずかしくないのか」といわれる。

菊地は小野がアオキから帰ったと思い込み、自宅に電話する。奥さんは、小野が菊地と会っているとばかり思っていたため、前回小野に嘘をつかれたこともあって、疑いをもつようになる。

俊子から弘子に電話があり、この前買ったテーブルを返したいという。

菊地が出勤すると、滝口が訪ねてきており、ナガヤマの件が解決したことを知らせてくれる。滝口は去り際、今度結婚することになったという。

菊地に連れられてバイト先にいったあと、美香は多摩川で洋介に会う。菊地から借りた学費を洋介がはねた被害者の治療費として渡そうとする。洋介は断るが、美香は川にお金を投げ捨てる。仕方なく洋介は受け取ることにする。小池はその様子を一部始終ビデオカメラに収めていた。

プロポーズを断られたショックで、ぼうっとして肩を落としながら歩く千里。娘ののり子も女優のオーディションに落ち、弘子は彼女と二人で食事にいく。のり子は、今わが家の氷河期なのという。

テーブルを受け取りに、菊地が俊子の店に向かうと、小野が待ち構えていた。俊子は婚約者から勧められて、このテーブルを買ったのだが、その男が返せといっているという。男が別れを切り出そうとしていることに俊子は気がついていて、荒れて酔いつぶれてしまう。

小池は、無理やり美香を電話ボックスに連れ込んで菊地に電話をかけさせ、留守番電話のメッセージに美香が洋介にお金をわたしたという事実ををふきこむ…。

恥ずかしいビデオ

菊地が帰宅すると千里が訪ねてきた。いつになく菊地は千里にやさしく接する。千里はまだプロポーズのことをあきらめていないというが、菊地はやんわりとはねつける。千里が帰ってから、菊地は留守番電話のメッセージに気がつく…。

朝まで寝つけなかった菊地は、あらためてメッセージを聞く。

小池が店にまで訪ねてきて、美香が洋介にお金を渡すシーンのビデオを見せる。菊地は、お金は彼女に貸したものだからどう使おうと勝手だ、そんな盗み撮りなんかして恥ずかしくないのか、という。

小野が弘子と連絡をとるため携帯電話を買う。早速番号を弘子に教えるが、小野の気持ちに気づいていない弘子は番号を書いた紙を菊地に渡す。菊地は、小野の妻からかかってきた電話に対し、携帯の番号を教えてしまう。

美香が菊地が紹介したバイト先で働きはじめる。カタログの写真を撮りにアオキにいくことになっていてやきもきするが、美香はいかなくてすむ。

洋介が運送屋で働きはじめる。美香は職場に訪ねていって、新しいバイト先の住所を教える。

小野が弘子の家に向かう途中、ばったり弘子に会う。公園で新しく買った携帯でふざけているうちに、小野の妻からかかってきた電話に弘子が出てしまう。疑いは決定的になり小野は家に帰れなくなる。

小野は菊地の家に泊まる。そこに千里がたずねてきて三人でもりあがるが、男はみんな若い女が好きなことに怒ってでていく。

朝、洋介が出勤途中の菊地に声をかける。バイクの事故で賠償金を払わなければならなかったことを説明して、お金を返そうとするが、菊地は美香に返せといって、受け取らない。

俊子の婚約者が、弘子の父青木に似た人を店の前で見たという。弘子を呼び出してその話をするが、弘子は怒ってとりあわない。

美香のバイト先にいって、カタログの写真の仕上がりをチェックする菊地。だが、美香は外に出ていていない。

弘子の父に似た怪しい男は滝口の店にも現われる。その話をきいて、さらに動揺する弘子。弘子の父は一年前にイタリアで船から落ちて死んだはずなのだ。

洋介は職場の女の子を介して美香にお金を返す。洋介は美香をさけている。

小池は美香の部屋の前でまちぶせするが、階段からおちて、「美香、おれのもんだぞ」といい残して去ってゆく。美香は自分の存在がいやになる。

弘子は菊地に付き添いをしてもらって、俊子の店に話をききにいく。俊子は、弘子が、父にとって、こわい存在、息苦しい存在だったという。

帰り道。菊地が、胸に頭をもたれて泣く弘子の肩をやさしくたたいているのを、じっと見つめる影。それは美香だった…。

死者からの手紙

美香は菊地にひとこと謝ると去っていってしまう。

菊地は部屋にたどりつく直前、急激な腹痛で倒れこみ、病院に運びこまれる。その場は平静をとりもどすものの、再検査することになる。

翌日、美香がカタログのレイアウトを持ってアオキにやってくる。菊地がいないので、弘子に借りた入学金を託す。

開店の準備をする俊子の前に立ちつくす影。それは弘子の父、青木だった。驚いてワインを落とす俊子。

菊地が美香の部屋に行くと、表にパトカーが止まっていて騒ぎになっている。小池が暴れているらしい。菊地はそれを避けて隙間に隠れている美香を見つけて、家に連れ帰る。

学校へはゆかないという美香に対し、菊地は「ぼくは裏切られたとは思わない。友達を助けただけだ。ぼくが同じ立場なら同じことをしただろう」という。美香は菊地の部屋を飛び出す。

深夜、俊子からの電話で、青木が生きて日本に帰ってきたことを聞かされる菊地。翌朝、ホテルに青木を訪ねることになる。

青木は酔って船から落ちたが。奇跡的に救い出され、その命の恩人とイタリアで結婚してしまったという。弘子には「会えないよなあ」としみじみいう。

弘子にほんとうのことをいえない菊地だが、弘子はホテルの電話番号を書いた父の筆跡を見てしまう。弘子は小野を呼び出してほんとうのことを確かめてほしいという。

ホテル。小野は俊子と鉢合わせしてしまう。菊地が青木に弘子に会うことを説得している最中に、二人連れ立って入ってゆく。それで、一同は弘子がもうすべて事実をつかんでしまっていることを知る。

店は定休日。菊地は弘子にこれから父の待つ喫茶店に行こうというが拒否される。

病院での再検査。問診票の告知の有無という項目に動揺する菊地。そこへ美香が訪ねてくれる。カタログの変更があるのでチェックしてほしいという。菊地は「君を苦しめているだけだった」と謝る。カタログには父には会いたくないという弘子からの手紙がはさんである。

弘子には会わずに帰ろうとする青木は菊地に弘子への手紙を託す。帰ったあとそれを渡して欲しいという。

菊地はすぐにそれを弘子に届け、子供のころよく一緒に遊んだところで青木が待っているという。

走る弘子。追いかける菊地。そして再会と和解。

マンションの前で菊地を待つ美香。二人は海へゆく。

鎌倉あたりの浜辺。ふざけあう二人。接し方がわからないという菊地に対し、美香は菊地の袖をひっぱる。見つめ合う格好になって、菊地は美香を抱きしめて「ずっとぼくのそばにいてくれ」という。

「残された時間」

菊地は美香にプロポーズし、返事はいますぐでなくてもいいという。

帰りの電車の中で、美香は泳いでいたら飛行機に乗っているひとから手をふられる夢をみたという。考えてみたらこれはある意味暗示的だった。

小池は歩いている美香に襲いかかろうとするが、交通事故にまきこまれて、病院にかつぎこまれる。

菊地の検査の結果がわかる。十二指腸が荒れている以外問題はないといわれて安心する菊地。廊下で美香にばったり会って驚く。美香は小池について病院にきたのだ。

美香はバイト先で面倒をみてもらっている柳沢という女性から、もうすぐやめてオーロラを撮るためにアラスカにいくことを告げられる。

弘子とつかの間の家族団欒を楽しんだ青木。イタリアに帰る前夜、青木、弘子、菊地、俊子の4人で食事をするが、その席で弘子はこのままずっといてほしいという。青木は「おまえはおまえ以上の人間」で自分がいなくても生きていけるはずだという。

小池の病室。小池は夢からさめたように冷静さをとりもどし、「どこでどういうふうに道を間違えてしまったのか」とつぶやく。そんな小池に、「わたしのどこがそんなにあなたを狂わせたのか」とたずねる美香。小池は「眼かな」という。

小野の家でくつろぐ菊地。小野の妻子は、弘子の件で実家に帰ってしまっているのだ。これもすべて携帯電話のせいだと毒づく小野。考えてみれば菊地と美香の出会いも携帯電話からだった。

弘子が軽い怪我をしたというのでかけつける小野。だが、弘子の家には俊子がいたため撤退する。帰り道、電話が鳴ってとりだそうとするが、人とぶつかって車道に飛び出し、壊れてしまう。これもまた暗示。

菊地は千里と偶然会って公園で話し込む。家に帰って留守電を確認すると、美香から、プロポーズの返事をしたいというメッセージが入っていた。

ショックで3日間店を閉めていた弘子だが、これからは自分のために店をやっていかなくてはという。その言葉をきいて安心する菊地。

運送屋でがんばる洋介に声をかけてから、美香は菊地に会う。きらびやかなクリスマスのイルミネーションの下、美香は「やっぱり結婚はまだ…一度は自分の足で歩いてみなくては」とプロポーズを断る。おたがい、プロポーズされたこと、したことがうれしかったとうなずきながら別れる。

千里の部屋。退院した小池が、美香に書いたものの出さなかった手紙を燃やしてほしいという。千里がその手紙をベランダから捨てると、ちょうどマンションに帰りついた菊地の上にすべてを覆いつくす雪のようにふりかかる。

輝ける未来

雪の降る中たちすくむ菊地。目の前の家の中では暖炉の美香と弘子がくつろいでいる。二人の呼びかけにこたえて菊地が中に入ると急に風が吹き込んで、火が消えてだれもいなくなってしまう…という悪夢で目覚める菊地。

遅刻して出勤すると、弘子は今年限りで店をやめると告げる。呆然とする菊地。

菊地がいない間にたずねてきたという美香に会いに、バイト先に向かう菊地。美香はアラスカにいって2、3年帰ってこられないという。それをきいて驚く菊地。夢の通り、菊地のもとからみんな去っていってしまう。

翌朝出勤すると店の中は品物が引き払われてがらんどうになっていた。

小野と二人で酒を飲んでくだを巻いたあと、夜中に小野の家で目覚めた菊地はある決断をする。

菊地は、明日アラスカにたつという美香に会い、アラスカで寒くないように耳あてつきの帽子をプレゼントする。これからも友達でいようと、橋の上で別れる二人。

弘子は、親戚に紹介されたお見合いを承諾する。

菊地は、小池の仕事を一緒にさがしているという千里から仕事がないかと相談される。菊地はふと何か思いついたように「あるかもしれない」という。菊地は「やっぱり君はたくましいんだな」とつぶやく。

仲間たちに送られて美香は空港へと向かった…。最後まで美香にちゃんと向き合えない洋介、だがその顔はなぜか晴れやかだ。

菊地の決断とは、品物を買い戻して店を再開することだった。店に帰ってきた弘子は、再び店いっぱいに置かれた品物を見て怒り出す。菊地は、ここ数日の弘子の様子を見ていられなかったというが、弘子は怒って部屋に閉じこもってしまう。

夜、弘子は菊地に謝りにいこうとするが、電気の消えた店の中、菊地はクリスマスケーキを買ってずっと待っていったのだ。和解する二人。弘子は明日、お見合いについてきてほしいと菊地に頼む。

翌日。物語の最初に二人がお見合いした場所。二人は弘子のお見合い相手が待つ部屋に通されるが、弘子は菊地の手をにぎって外に連れ出し、まるで映画『卒業』のようにバスに飛び乗る。

小池の仕事とは、アオキの店番だった。今日も店は開けているのだ。

どことも知れぬバスの終点で降りる二人。弘子はずんずん駆け出し、十分離れたところで、菊地に向かって、「ミシェール!」と叫ぶ。