コラム:フランス語における男女平等

人の職業、地位、国籍などを表すフランス語の名詞にはたいてい男性形と女性形があります。たとえば、男性のフランス人は"français"で、女性のフランス人は"française"です。ところがこれには例外があって、“professueur”(教師)、“ministre”(大臣)、“président”(大統領)、“sénatour”(上院議員)、“ambassadeur”(大使)、“chancelier”(総裁)などは男性形しかなく、たとえ女性の場合でも、“un”、“le"など男性名詞用の冠詞をつけていました。女性がこれらの地位を占める場合には、“Madame le professueur"というように頭に"Madame"をつけて女性であることを示していたようです。

“<ahref=“http://www.radcliffe.edu/quarterly/199804/whats_noun.html">What's in a Noun? Gender and Power en Français“というページによると、最近こういう慣用が見直され、新聞や公的文書では、女性形を用いるようになったそうです。おそらく例えば"la professure"と書くようになったのだと思います。

このような動きに反対する学者もいるようで、「女性が男性と同等の権利をもつようになったからといってフランス語の文法まで変える必要はない。これではアメリカの「政治的な正しさ」のくだらない模倣にすぎない」と主張しています。

これに対して、ある女性の学者は「“instituteur”(小学校の先生)、“servante”(女中)、“domestique”(使用人)、“assistant”(助手)、“secrétaire”(秘書)などには女性形が存在するので、これは文法の問題ではなく権力と権威の問題だ」と反論しています。

個人的には後者の意見の方に説得力があるように思えます。その後、この方針が覆ったという話はきかないので、古い辞書などでは、男性形のみしかないこれらの言葉も、女性形をもつようになったと考えていいでしょう。

なお、蛇足ですが、このページによると、フランスは西ヨーロッパ諸国のなかで、女性代議士の割合が著しく低いようです。