西部邁『保守思想のための39章』
右な人たちの言い分は、その反感に満ちた語り口だけで、聞く耳をもてなくなってしまう。その点、この本は、純粋にいい意味で、奥歯にもののはさまったような語り口で書かれていたので、ちゃんと最後まで読むことができた。筆者自身も、「保守思想の陣営が、いわゆる左翼思想への反感を吐露することに終始してきた」ことを認めている。
対立する価値を認めて葛藤の中で平衡を維持するという考え方や、「技術知」と「実際知」の対比など、関心をひかれるところはいくつかあったものの、結局保守思想がよりどころとする「伝統」や「輿論」というとらえどころのないものからは、ドラえもんのポケットのようにいくらでも望みのものを導き出せてしまう。
保守思想はオカルトだ。
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