フランク・オコナー短編集
何を隠そう、この著者に注目したわけはフラナリー・オコナーと名前が似ているからだ。それによってフラナリー・オコナーの名前もぼくの記憶に強く刻み込まれることになったので、見事な連係プレーにお見事というしかない。とはいっても、この二人は、名前からわかるように性別はちがうし、生まれた年と場所も、フランク:1903年アイルランド生まれ、フラナリー:1925年アメリカ南部生まれ、と隔たっている。しかも、なんとフランク・オコナーというのは筆名で、本名はマイケル・オドノヴァンというのだ。
共通点は、カトリック教徒で、その影響がうかがえる作品を書いている、そして二人とも短編の名手と呼ばれていることだ。でも、その作風は大きく異なっている。幻想的で暴力や死の影がちらつくどぎつい物語を書いたフラナリーに対し、フランクはさりげない筆致でユーモラスに市井の人々の姿を描く。最初軽さを感じるが、実は人間への深い洞察と複雑な感情の奥行きに満ちていることがわかってくる。さすが名手といわれるだけあって、どれも一級の作品だった。
戦争を背景に収録作中ただ一編だけ暴力と死が表面にでてくる『国賓』、町から離れてひとりさびしく暮らす女と放浪男の奇妙なラブ・ストーリー『あるところに寂しげな家がありまして』、体調をくずし夫と離れてひとりアメリカから夫の両親が暮らすアイルランドの寒村に療養にやってきた女をめぐるミステリアスで哀愁漂う物語『マイケルの妻』など、読み応えのある作品がいっぱい。
結論: F. オコナーは両方ともすごい。
★★★★