R. A. ラファティ(浅倉久志訳)『九百人のお祖母さん』

九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫SF)

奇才と名高いラファティの短編集を今更ながら読む。表題作を含む最初の数編を読んでいるときは、確かにアイディアは突飛だし、知的ギミックにもあふれているけど。結局ただの通俗的なSFなんじゃないか思ったが、読み進めるうちに評価が一変した。ルイス・キャロルばりのナンセンスなユーモアに深い思索がまぜこまれた独自の世界観の作品群だ。

特に、友人の死の真相をさぐるため異星で命がけ狩りをする男を描いた『山上の蛙』、ある小惑星に棲息するできそこないの熊のぬいぐるみみたいな生き物『スナッフルズ』、スミルノフの研究所シリーズが三編収録されているが、その中から他人のものの見え方、感じ方を再現できる機械を発明する『他人の眼』の三編がすばらしかった。

ラファティは1914年に生まれ2002年に亡くなっている。なんと45歳から禁酒をきっかけに作品を書き始めたそうだ。邦訳されている作品はそんなに多くないみたいだけど、一通り読んでみよう。それがなくなったら英語のペーパーバックを入手してもいい。