ジャネット・ウィンターソン(岸本佐知子訳)『灯台守の話』

灯台守の話 (白水Uブックス175)

物語る行為というのは、闇の中で自分がいる位置を見いだすための光なのかもしれない、ちょうど灯台がそうであるように。

母親に死なれて天涯孤独になってしまった少女シルバーが、灯台守のビューにひきとられる。彼女はビューが語る物語をきいて育ち、やがて自ら物語るようになる。灯台を離れ、ひとりで世界中を放浪しながら、物語は続き、やがて灯台にもどってきた彼女はビューと愛犬ドッグ=ジムに再会する、おそらくは物語の中で。

そしてビューが語る物語の中のもうひとりの主人公バベル・ダークもまた、愛しい恋人に再会を果たす、彼を呪縛していたタツノオトシゴの化石を手放しながら。