古川日出男『僕たちは歩かない』

僕たちは歩かない (角川文庫)

そんなこといわずに歩こうよ、と最初思ったが、歩かないのにはそれなりのわけがあったのだ。

1日あたりの時間が2時間多い26時間制の東京。フランス料理のシェフになるという目標を共有し、それぞれの方法でそこにやってきた「僕たち」は、増えた2時間を使って修行に励む。しかし仲間の一人が事故で死んでしまい、彼女に会うため、「僕たち」はある規則に従いながら冥界を目指す。その規則とは、途中地面に足をついてはいけないこと、つまり歩いてはいけない……。

ほかの本のしおりに使えそうなくらい薄い本。でも、星野勝之という人の素敵な挿絵はついているし、古川日出男の文章のどこにもすきはなく凝縮されている。文章のリズムにのれば26時間制の東京にトリップできて、余分な2時間でちょうどこの本が読める。