岸本佐知子『ねにもつタイプ』

ねにもつタイプ (ちくま文庫)

翻訳家岸本佐知子さんの奇想天外なエッセイ集。

腹をかかえたりあっけにとられたりするうちに、妙な親近感や懐かしさのようなものが芽生えてきた。なんだろうと思ったら、子供の頃に感じていた感覚なのだった。子供の頃は目にするものすべてが不思議でとんちんかんなことばかり考えていたけど、そこには子供なりの筋の通った論理があり、いつの間にかそれが大人の論理に移行しただけなのだ。ぼくなんかはもうすっかりその頃考えていたことを忘れていたけど、岸本さんはエピソードのひとつひとつを事細かに覚えていて、かつその頃の視点を今に蘇らせてまわりの世界を眺めることができる。とても希有な能力で、うらやましい。

身の回りのあちこちに口をあけていた「地獄」、コアラの鼻の材質、トイレットペーパーとの会話、カルピスを飲むと舌の奥にできる「モロモロ」。みんな一度は経験したり考えたことがある気がする。

そしてべぼや橋。本編ではネットでは自分のサイトしかヒットしないと書いてあったが(あとがきでは3件ヒットに増加)、今 Google で検索したら661件になっていた。