モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号
70ページ以上にわたる村上春樹のインタビューが掲載されている(聞き手は古川日出男)。かなりフランクに話していて、村上春樹の創作の秘密というか、秘密なんて特にないということがよくわかる。
- 『風の歌を聴け」と『1973年のピンボール』はあまり気に入らなかった
- 肉体を健康に保つのは魂の不健康なところをとことん見届けるため
- 保守と前衛両方からはさみうちで非難されてきた(村上春樹が無自覚にでも結果的にそういう枠組みを壊してくれたことで後続世代の作家はずいぶん楽になった(古川)、これは川上弘美と小川洋子の対談でも同じようなことをいっていた)
- 一人称で書くのが楽。でもそれでは足りなくなってきた。『1Q84』は全編三人称で書かれたはじめての長編。
- 創作の合間に翻訳をおこなうことで、抽斗をいっぱいにしておくことができる
- 野球場でひとりでビールを飲んでいるときに唐突に書きたいという衝動がおそってきた。だから書くことに対する畏敬の念がある。
続いての特集は、幻想的な作風で、けっこう同じくくりにいれられがちな川上弘美と小川洋子の対談。作品でもうかがえるけど、二人は方法論が対極的に異なることがよくわかる。
そのほか古今東西の短編小説、エッセイともりだくさんだが、COMES IN A BOX という人の『黒い空間 雨の音』という作品が妙に気になった。プロフィールには1980年代生まれの日本人男性とだけ書いてあって、たぶん投稿作品じゃないかと思うが、終末間近の世界の脆くてはかない感触と、家具に使われているプラスチックのマットな質感の間の不整合というか、相互の異物感みたいなものを表現するためだけに、独特の世界観を作り上げたような気がして、お主やるな、という感じだった。