アレックス・パヴェージ(鈴木恵訳)『第八の探偵』
7編からなるミステリー短編集なのだけど、作中作という趣向が凝らされている。グラント・マカリスターという数学者が、ミステリーの構成についての自らの論文の実例として書いた短編集ということなのだ。各短編の合間に、作者グラントと出版のために彼を訪ねてきた編集者ジュリアとの対話が挟み込まれる。グラントの理論とは、殺人ミステリーのキャスト(登場人物)に関するものだ。必要不可欠なキャストを容疑者、被害者、探偵、そして犯人という4つに分類し、それぞれにどういう制約と自由度があるのかを論じている。
そして、実はキャストにはもうひとつ「作者」というのがあるんじゃないかというのが読み終えて思ったことだ。第八の探偵がたどり着くのはまさに作者は誰なのかという謎だったりする。
7つの作中作はどれも後味がよくないものばかりで、それをめぐって対話する二人のどちらにも好感はもてないが、それはたぶんねらったものなのだろう。物語の構造に集中してけっこう夢中になれた。
★★