アーサー・C・クラーク(酒井昭伸訳)『都市と星』
一応SFファンのつもりなのにアーサー・C・クラークを読むのは数十年前の『幼年期の終わり』以来超久しぶり。考えてみるとこういう古典的なSFは今まであまり読んでこなかった。
十億年後のはるか未来。人類は一時銀河系に帝国を築くが、『侵略者』との戦いに敗れて、今では人々は地球の半径20-30kmの都市ダイアスパーに閉じこもって暮らしている。地球のそれ以外の地域は海もなくなり砂漠に覆われている。都市は中央コンピュータに制御され、人々は労働の必要もなく好きなものをいつでも自動で取り出せる。人は成人の姿で《創造の館》から生まれる。老化は遅く千年くらいで自分の意志で眠りにつき再び《創造の館》から生まれるのを待つ。こうして実質的に永遠の命が約束されている。しかし人々は都市の外への想像力を欠き、むしろ本能的な恐怖心を持っている。
そんな状況で主人公アルヴィンがダイアスパーに生まれる。彼はほかの人々とは違って、外の世界への興味を持ち、外に出る手段を見つけようとする。彼は過去の人生がない得意社と呼ばれる存在で、中央コンピュータの何らかの意図がそこに感じられた。それに勇気づけあれて彼は自分の道を見つけてゆく。
『幼年期の終わり』とこの作品に共通するのは、描こうとしているのが、人類あるいは人類を含む知的生命全体の物語だということだ。ただ、この作品については、アルヴィン個人の成長物語としても読むことができる。
アルヴィンが最初にダイアスパーの外の世界にたどり着くところまでは文句なしにワクワクしたが、それ以降の展開は若干性急で驚異がインフレしている感じがした。ラストはお花畑的なハッピーエンドではなく、時の流れのはるかさに、くらくらする。アルヴィンの大人な選択とあわせて、深みを感じるエンディングだった。
★★