ベン・H・ウィンタース(上野元美訳)『カウントダウン・シティ』
小惑星衝突間近で混乱し急速に無政府化しつつあるアメリカで、ひとり事件解決に挑む刑事ヘンリー・パレスの活躍を描く三部作の第二作。
今回は衝突の3ヶ月前。パレスは警察から解雇されて一般市民になりそのときを待っている。早くもライフラインが失われようとする中、パレスはかつて自分と妹のベビーシッターをしてくれた女性から、出ていった自分の夫をさがしてほしいと依頼される。多くの人々が「死ぬまでにやりたいことリスト」を実行するため自発的に行方をくらます中、人捜しはほとんど意味がなく不可能だった。それでもパレスは見返りなしに引き受ける。
祈りでも捧げるような熱心さでパレスは探索を続け、ついには目的の人物にたどり着くが、前作同様、今回も不幸な結果しかもたらなさい。いずれにせよ、この世界ではなにかがよい方に変わることはありえないのだ。
しかし、まだ衝突前なのにアメリカ社会の崩壊ぶりは凄まじい。独裁的な国家ではまた別の地獄が待ってそうだが、その点、実は日本みたいな管理されることに慣れきっている社会がこういうときに一番強いかもしれない、などと思ったりした(マイノリティーへの迫害は起きそうだが)。
★★