M・コーニイ(山岸真訳)『ハローサマー、グッドバイ』

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫 コ 4-1)

帯にはSF恋愛小説の最高峰なんて銘打たれているし、M・コーニイなんてほとんど聞いたことないし、どうしようかなと思っているうちに、夏が終わりそうになったので、あわてて手に取り、ぎりぎり8月中に読み終えることができたのだった。

主人公である思春期の少年、少女の恋愛描写に特に新味はないのだが、特筆すべきは主人公たちが(地球人からみて)異星人で舞台が地球以外の惑星であること。

読んでいて、粘流(グルーム)等の独特の自然現象や愛すべきあるいは恐るべき人間以外の生物の描写にはセンス・オヴ・ワンダーをくすぐられ、寒さを根源的に恐れるこの星の文化にも興味をひかれた。ののしり言葉が、freezingとかなのだ。そして夜空に浮かび上がる巨大な惑星。ラックスというその名もまた最大級のののしり言葉になっている。もちろんそういうことが物語の大きな鍵を握っているわけだ。

ウェルメイドで、SFの王道をゆく作品だと思う。訳もいい。

お勧め★