宮下誠『20世紀音楽 クラシックの運命』
現代音楽といえば不協和音ビシバシで、メロディーというものが存在しないか甚だしく見つけにくいかで、とっつきが悪いことこの上ないが、ぼく自身は怖いもの聴きたさでたまに耳を傾けているうちに、耳になじむ曲も出てきているような状況だ。
さて、本書は現代音楽というくくりよりは幅広く、主に20世紀に書かれた(ワグナーやブラームスなど20世紀音楽を準備したと思われる19世紀末の作曲家についても触れられている)クラシック音楽について詳細な見取り図を描こうとしている本だ。あまり聴衆本位でない「わからない」音楽が生まれてきたのには必然性があり、そこには20世紀という時代がはっきり刻印されている。そこにこれらの音楽を理解するヒントがあるのだ。音楽を言葉で語ろうとすると、どうしてもわかったようなわからないようなジャーゴンをちりばめることになって、音楽そのものに届かない感じがしてしまうのだけど、本書はオペラのあらすじなんかも紹介してあって、おもしろく読めた。
我ながら近現代の曲はそれなりに聴き込んでいるつもりだったが、とりあげられる作曲家の名前の半分くらいは完全な初耳であることに愕然とした。まだまだ鉱脈は隠されているようだ。ただ、ぼくの大好きなプーランクの扱いが小さくて、サティにいたってはまったくとりあげられていないのがさみしい。
本書の末尾は実用的なディスクガイドになっているが、ぼくもここでお気に入りの20世紀音楽を紹介しておこう。選考基準は、ちょうどいいくらいの前衛性が感じられる作品。20世紀初頭のフランス音楽は好きな曲が多すぎて収集がつかないので除外してある。
- ベルク バイオリン協奏曲
- バルトーク 弦楽四重奏曲第1番、第2番
- オネゲル 交響曲第2番, 第3番
- ヒンデミット 交響曲「画家マチス」
- メシアン 世の終わりのための四重奏曲
- スティーヴ・ライヒ “Different Trains”
- グレツキ 交響曲第3番