ヘンリー・ジェームス(蕗沢忠枝訳)『ねじの回転』

ねじの回転 (新潮文庫)

ゴーストストーリー、怪談といえばその通りなんだけど、かなり毛色がちがう。

幼い兄妹と召使いが暮らす古い館に家庭教師として住み込むことになった女性から見た一人称で物語は語られる。亡霊たちは主人公にしか見えない(子供たちにも見えるようなのだけど、最後までよくわからない)。それで、途中からは、すべて主人公の妄想と偏見なのではないかという疑念にとらわれてしまう。

亡霊たちはもともとこの屋敷にいた従者と主人公の前任者の家庭教師で、生きていたときと同じ姿をしている。もし、主人公の妄想でないとしたら、子供たちに何か悪い影響をもたらそうとしているらしい。超自然的なところがなくなんだか生々しくて、生き生きとしたところさえ感じてしまうので、ほとんど怖くない。怖いのは、(もし妄想だとしたら)妄想にとりつかれた主人公自身であり、(妄想でないとしたら)亡霊に協力する子供たちで、やはり生きている人間が一番怖いのだ。

翻訳は固くて、こなれていない感じがしたので、ほかの訳にした方がいいかもしれない。岩波文庫や創元文庫からもでている。