斉藤環『「負けた」教の信者たち ニート・ひきこもり社会論』
「ひきこもり」に対する支援活動で有名な精神科医斉藤環氏が中央公論に連載していた内容をまとめたもの。タイトルとなっているニート・ひきこもりの話題だけでなく、折々の時事ネタをめぐる時評が収められている。
もともとが時評なので、ひとつのテーマに深く切り込んでいくのではなく、気楽にどこからでも読めるタイプの本だ。中心となるのはやはり著者の専門の「ひきこもり」で、韓国のひきこもりと日本のひきこもりの類似点と相違点の話や、ニートとひきこもりのちがいの話が特に興味深かった。
つい、ニートとひきこもりを同類のように考えてしまいがちだが、前者は働く意志がなく学校もいってないという外面的な特徴をとらえて定義しているのに対し、後者は、家族以外の人間関係がないという内面をとらえている。ひきこもりは定義上ニートの中に含まれることになり、ニートの方が広い概念だといえる。
ちなみにぼくは、心は働きたくないニートで、体は首都圏にひきこもりなので、他人事ではない。
★★