アンドレイ・クルコフ(沼野恭子訳)『ペンギンの憂鬱』
背表紙に新ロシア文学と書かれているけど、舞台はウクライナで作者もウクライナ人。でも言語はロシア語で作者も元々ロシア出身だからロシア文学でもいいのかもしれない。
主人公は売れない短編作家なのだけど、新聞向けにまだ死んでいない人物の死亡記事を書きためておく仕事を引き受けることになる。それまで、ペットであるペンギンのミーシャと二人だけの孤独な生活を送っていた彼のまわりが、それをきっかけににわかにあわただしくなる。ペンギンと同名のミーシャという男、警官のセルゲイ、ミーシャの娘ソーニャ、セルゲイの姪でベビーシッターのニーナ。そうして、彼は擬似的な家族を手に入れる。でも、彼がほんとうに好きなのは、ペンギンのミーシャだけなのだ。
彼は基本的に受け身の人間だが、受けたことはどこまでも誠実にやり通そうとする。そこに好感が持てたが、結局そのきまじめさが彼を追い込んでいくことになる。そして、知り合った人々がいとも簡単に死んでゆく。
ペンギンのミーシャがとにかくかわいい。憂鬱症?ということで感情をあらわさず寡黙なのだが、主人公のあとについてぴょこぴょこ歩いたり、ときおり足元にすりよってきたりする。ペットとしてほしくなってしまった。今度水族館か動物園にいってみてみよう。
★★★