リチャード・ブローティガン(藤本和子訳)『西瓜糖の日々』

西瓜糖の日々 (河出文庫)

その世界では曜日ごとにちがう色の日の光がさす。金曜は白、土曜は青、日曜は褐色、月曜は赤、火曜は黄金色、水曜は灰色、そして木曜は黒。黒い太陽が空にある間は音がまったく聞こえなくなる。西瓜もとれた曜日ごとに色がちがう。だから、西瓜からとれる西瓜糖には七つの色がある。

その世界では、西瓜糖を使っていろいろなものを作る。家や橋、それに時計。黒い西瓜糖で作った時計は音がしない。

そこは、黒い太陽が光っていなくても、とても静かな時間が流れている。いつもそうだったわけではなく、昔は人食い虎がいた。この物語の語り手のななしさんの両親も虎に食い殺されたのだ。

だが、今はとても静かだ。その静けさの中で、何かが少しずつ終わってゆく。西瓜糖のほのかな甘さが口の中から消えるように……。

★★★★