三浦展『ファスト風土化する日本 郊外化とその病理』
「ファスト風土」というのは「ファストフード」のもじりで、いまや全国的にひろがっているファミレスやディスカウント店が立ち並ぶ画一的な生活空間を指している。農村部が郊外化する一方従来の中心街は没落する。人々は車で点から点に移動し、街はその広がりを失う。
筆者はこうした風景・ライフスタイルの貧しさを説く一方、統計データや実例をもとに、地方で郊外化した地域に特に犯罪が増加していることを実証する。「犯罪現場の周辺にはジャスコがある」というのはさすがにちょっといいすぎのような気もするが。
原因としては、郊外化による地域共同体の崩壊、道路網の発達による流動性の増大などがあげられている。大都市に集中していた「豊かさ」が地方に行き渡るのはいいことだったが、土建国家の論理で開発が行われたため、犯罪を呼び込むような空虚な空間ができあがってしまった。
筆者は、今後の街のリノベーションのポイントとして4つをあげる。多様な物や人が混在していること。歴史が重層的に積み重なっていること。チェーン店でない個性的な店があること。そして、歩けることだ。
偶然、それはぼくのすきな街の特長と一致している。といいつつ、郊外の空虚な風景に逆説的な魅力を感じてしまうのだが。
★★★