芦辺拓さんによると、戦前二大都市奇想小説は先日読んだ『魔都』とこの『深夜の市長』ということなので読んでみた。 長編というには短くて長めの中編といったところか。深夜の散歩を愛好する主人公は偶然殺人事件を目撃してしまう。危ういところを深夜の市長と呼ばれる謎の人物に助けられ、奇妙な事件の...
久生十蘭の代表的な長編小説。舞台は1934年の大晦日の夜から1935年1月2日未明まで20数時間の東京。日本滞在中の安南国皇帝の愛人が自宅アパートから転落して殺され、当初犯人と目された皇帝が誘拐される。フランス大使が謁見にくる時間までに皇帝を発見しないと日本政府はのっぴきならない...
はるか昔、半月ばかり入院していたとき読書だけが楽しみで、本があれば何もいらないとまで思ったが、そのとき唯一読めなくて断念したのが本書だ。 気を引き締めて再挑戦してみたが、あれ読める。なんか肩すかしを喰らったような感じだ。その間にいろいろ読書遍歴を重ねたのでそれで読書力が向上したのか...
再読なのだが、この小説の主人公のようにほとんどすべて忘れていた。主人公の若い男性が、精神病院の個室でまったく記憶がないまま目を覚ますところからはじまるたった一日の物語だ。 『ドグラ・マグラ』がどういう物語かということは実はこの小説自身の中で語られている。この小説が患者のひとりが書い...