鼓直編『ラテンアメリカ怪談集』

収録作は以下の通り。過半数がアルゼンチンの作家の作品だ。 ルゴネス(田尻陽一訳)『火の雨』 - ARG キローガ(田尻陽一訳)『彼方で』 - GTM ボルヘス(鼓直訳)『円環の廃墟』 - ARG アストゥリアス(鈴木恵子訳)『リダ・サルの鏡』 - GTM オカンポ(鈴木恵子訳)『ポルフィリア・ベルナルの日記』 - ARG ムヒカ=...

G・ガルシア=マルケス(鼓直訳)『百年の孤独』

架空のマコンドという村を開拓したブエンディア一族が村ごと滅亡してしまうまでの百年間を描いた、七世代にわたる盛衰記、という要約はそれほど重要でもなくて、現実にはありえない突飛なエピソードが驚くべき迫真性で語られるその語り口が素晴らしい。 有名な冒頭の一節「長い歳月が流れて銃殺隊の前に...

ガブリエル・ガルシア=マルケス(鼓直訳)『族長の秋』

ある独裁者の長い後半生を描いた作品。彼はこの作品中で名前をもたず「大統領」とのみ呼ばれる。荒れ果てた大統領府で彼の死体をみつける部分からはじまる。その時点で大統領の年齢はまちがいなく100歳は越しており、200歳も越えているかもしれなかった。そこからいったん時代を大きく遡り時代を...

G.ガルシア=マルケス(鼓直、木村榮一訳)『エレンディラ』

ラジオから流れてきた朗読に耳を奪われた。ぬかるみでもがいている大きな翼のある老人を助ける。羽毛はすっかり抜け落ちて空を飛ぶことはできないようだった。きいたことのない言葉を話し、こちらの言うことも理解できない。その正体が天使なのか悪魔なのか翼のあるノルウェー人なのか判然としない。家...

G. ガルシア=マルケス(野谷文昭訳)『予告された殺人の記録』

薄いけど中身は特濃。実際にマルケスの若い頃故郷の小さな町で起きたある凄惨な殺人をベースに、ドキュメンタリータッチで関係者それぞれの視点から実際起きた出来事を克明に再現した小説。 事件そのものは下世話な理由から起きている。結婚式の夜、処女でなかったという理由で花婿バヤルド・サン・ロマ...

コルタサル短編集(木村榮一訳)『悪魔の涎・追い求める男』

本書に所収されている『南部高速道路』という短編を長塚圭史が脚色・演出している芝居をみて、とてもよかったので、原作を読もうと思って手に取った。 初期の作品から後期の作品まで幅広くとりあげられているようだ。コルトレーンを彷彿とさせる破天荒な天才サキソフォンプレイヤーを彼の伝記作者にして...