京極夏彦『鵼の碑』

前作『邪魅の雫』以来なんと17年ぶりの百鬼夜行シリーズ。前作はほぼ完全に忘れ去っていて、シリーズ共通のキャラクターもあやふやになっていた。もちろん、独立した作品なのでそれでも全然大丈夫だ。 鵼(ぬえ)とは源頼政が退治したとされる、「頭は猴、手足は虎、胴は貍、尾は蛇」の姿をした化け物...

京極夏彦『邪魅の雫』

これまでは個人あるいは集団がとりつかれた巨大な魔が引き起こす陰惨な事件を描いてきた京極堂シリーズだが、今回はごくありきたりの連続毒殺事件だ(それがありきたりに感じらるのもどうかしているが)。そしてその魔もとてもとても小さなもの―雫としてあらわれる。全体的にとてもこじんまりしている...

京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』

人はそれぞれ自分固有の世界観をもっているものであるが、資質とか機会のせいでどこかしら歪みがあるはずだ。今回焦点があてられている人物は、知性と教養に恵まれその世界観は全きものと思われた。だが、そこにはたったひとつ大きな瑕があった。その瑕が悲劇を呼ぶ。 京極堂のシリーズはいつも果てしな...