害虫、害獣、糞尿、臭気がてんこ盛り。ひょっとすると黄泥街で一番リアルなのはそういう汚穢なのかもしれない。 少なくとも登場する人間よりはリアルだ。王四麻はいなくなったあと元々存在していたのかどうかさえわからなくなるし、救世主的な崇拝の対象となる王子光も「いったい人間であったのか、むしろ一条の光であったのか、はたまた鬼火であったのか、誰にもしかとわからなかったからだ」と書かれている通りだし、上部の権力者である区長として登場する人物も、その正体ははっきりしない。生と死すら曖昧だ。胡三じいさんは死んだあとも歩きまわって話している。 ...