東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』

「観光客の哲学」といわれるとバブルの頃はやったような凡俗な消費社会肯定論の亜種を想像してしまいそうになる。しかし「観光客」とは「他者」のことだ。リベラリズムが常に訴え続けてきた「他者を大事にしろ」というポリシーが通用しなくなりつつあるなか、従来まじめな哲学考察の対象とされてこなか...

東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』

夢中になって、一気に読んでしまった。 東浩紀自身の分身のような哲学者・批評家・小説家葦船往人とその家族たちがパラレルワールド間を行き来し、時代を飛び越え、新たな家族の絆を模索する本格SF(Speculative Fantasy)。量子回路のネットワーク、人間の意識を媒介にしたパラレル...

思想地図 vol.1 特集・日本

東浩紀、北田暁大両氏編集による論文誌の体裁をとった書籍あるいは、書籍の皮をまとった論文誌。第一弾は「日本」という一見とらえどころのなさそうなテーマだが、大きく、ナショナリズムと公共性の問題、およびサブカルチャーという二つの核をめぐる論文、討議録が掲載されている。 サブカルチャーは門...

東浩紀・北田暁大『東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム』

日々東京を歩き回っているぼくにとって、東京の街について語られる言葉は他人事としてはきけなくて、まるで「家族」の話をされているような微妙な感情をいだいてしまう。 東浩紀と北田暁大という、共に1971年生まれであり、東京近郊で生まれ育ち、東京に関心を持ち続けてきた二人の対論をまとめた本...

東浩紀『郵便的不安たち♯』

文芸、サブカルチャー、それにデリダ、ジジェク、柄谷行人など思想家に対する批評、その「批評」というものをとりまく現状分析、講演、エッセイなどバラエティに富んだ、一冊まるごと東浩紀的な本。 内容が多岐に渡っているので統一的な感想をあげるのは難しいのだが、すべての文章に思考の強度が感じら...

東浩紀『動物化するポストモダン―オタクからみた日本社会』

『自由を考える』は対談だったので、東浩紀の考えをいまひとつとらえきれなかった。その物足りなさを補うためこの本を買った。 内容はオタク系(サブカル系)の文化を分析して、そこから90年代以降の現代日本社会が向かっている「動物化」という現象をみていこうというもの。論旨を簡単にまとめてみる...

東浩紀・大澤真幸『自由を考える―9・11以降の現代思想』

最近よく名前を聞く東浩紀の本を一度読んでみたいと思って、書店の棚に積んであったのを手に取ったのだが、最近出たばかりでかなり売れているらしい。 従来の権力は規律訓練型で、個人の内面に干渉して集団の規律を守らせるようにしようとしていたけれど、「大きな物語=第三の審級=理想」の凋落ととも...